目次
- 1 契約不適合の種類
- 1-1 種類・品質に関する契約不適合
- 1-2 数量に関する不適合
- 1-3 権利に関する不適合
- 2 契約不適合があった場合の対処
- 3 どの契約不適合原因の場合にどの対処が可能なのか
- 4 特約による契約不適合責任の回避
- 5 瑕疵担保責任との違いは?
- 6 契約不適合責任を問われないようにするためには?
- 7 終わりに
不動産取引において、必ずしも契約上想定されていた状態で土地・建物が引き渡されるとは限りません。万が一契約に適合しない土地・建物を引き渡してしまった場合、売主は契約不適合責任を問われます。そんな契約不適合責任とはなにか、どのような場合に契約不適合となるのかを解説していきます。
契約不適合の種類
契約不適合の種類は、大きく分けて3つあります。
〇引き渡された土地・建物の種類・品質に関する契約不適合
〇引き渡された土地・建物の数量に関する契約不適合
〇移転した権利に関する契約不適合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
種類・品質に関する契約不適合
まず、種類、品質とはどのようなことをいうのでしょうか。
種類の契約不適合とは、土地であれば契約書上と実際の地目が異なることや、建物であれば居住用等の用途が契約書上と異なること等をいいます。
品質の不適合とは、土地であれば土壌汚染や埋設物があること、地耐が不十分であることや、建物であれば雨漏りなどの欠陥、給配水管の損傷などをいいます。
なお、契約不適合かどうかは当事者が契約時にどのような品質等を備えるべきとして契約を結んだかによって決まり、契約に適合しているかどうかは土地・建物の引渡し時に判断されます。
このように、土地や建物自体に想定外の欠陥や問題がある場合に種類・品質の契約不適合であるといえます。
数量に関する不適合
ここでいう数量とは、平米数や坪数等の面積のことをいいます。そのため、契約時に明示された坪数で売買代金を算出したものの、その後実測したところ契約時に明示された坪数と実際の坪数が異なることが発覚した場合、契約不適合となる可能性があります。
権利に関する不適合
権利に関する不適合とは、
・引き渡された土地・建物が売主単独のものではなく、敷地の一部に他人の所有権がかかってしまっている場合
・引き渡された土地建物に地役権、地上権、賃借権等が設定されているために、買主が単独で排他的に土地建物を利用することが妨げられる場合
・契約にはないはずの抵当権等が設定されており、土地建物を競売にかけられる可能性がある場合
上記のような場合が挙げられます。
なお、契約した土地建物の全域が売主のものではなく他人のものだったという場合は他人物売買となり、売主はその土地建物を取得し買主に所有権を移転する義務を負います。したがって、契約は有効です。
※抵当権とは
お金を貸す際に、借りる側が複数人からお金を借りてしまったために破産し、貸した側がお金を取り戻すことができないといった事態になることを防ぐために設定されるものです。借りる側が所有している土地建物に抵当権を設定すると、借りる側がお金を返さなかった場合に当該土地建物を競売にかけて現金化し、貸した分のお金を取り返すことができます。
契約不適合があった場合の対処
契約不適合があった場合は、以下の対処法があります。
1、追完請求権(民法562条)
買主は、土地建物の欠陥の補修や埋設物の除去、契約坪数より不足する土地建物引き渡し、土地にかかる他人の権利を取得し明渡すなど、履行の追完を請求することにより、契約不適合状態を解消するように求めることができます。
2、代金減額請求権(563条)
買主は、契約の不適合の程度に応じて売買代金の減額請求をすることができます。これは、買主が相当の期間を定めて履行の追完の請求をしたものの履行がなされない場合に行うことができます(563条1項)。また、土地建物に売主以外の者の権利がかかっている場合、その所有権を取得できない部分に応じて代金の減額を請求できます。
しかし、履行の追完ができない場合や売主が履行を明確に拒絶する旨を表示したとき等には、無催告による解除が可能です(563条2項各号)。
3、契約の解除(564条)
契約の解除は、買主から一方的に「解除をする旨」を売主に表示することで、契約の効力を遡及的に消滅させることができます。したがって、引き渡された土地建物がある場合は売主に引渡し、買主は支払ってしまった代金を返還するよう売主に請求することができます。これには、契約の解除を行うには、履行の追完の催告をしてもなお履行がなされないという状況であることが必要です。
しかし、契約した土地建物の全部を引き渡すことができない場合や、一部他人所有の土地建物において、残存部分のみでは契約の目的を達成することが不可能な場合は、無催告で解除することができます。
4、損害賠償の請求(564条)
契約不適合により得られなかった利益の賠償を求めることができます。なお、3の契約の解除を行った場合でも、損害賠償請求を行うことが可能です。
どの契約不適合原因の場合にどの対処が可能なのか
それでは、どの契約不適合の原因があったときにどの前述の対処ができるのでしょうか。下記をご覧ください。
〇種類・品質に関する不適合 〇数量に関する不適合
追完請求権、代金減額請求権、解除権の行使、損害賠償請求を行うことができます。ただし、契約不適合の原因が買主に責任がある場合は、追完請求権・代金減額請求権を行使することはできません(562条2項,563条3項)。
また、損害賠償請求は、売主に帰責事由がない場合、請求を棄却されてしまう可能性があります(415条1項ただし書)。
さらに、種類・品質に関する不適合の場合は、契約不適合であることを知った日から1年以内に売主に当該不適合の事実を通知しなければなりません(566条本文)。
〇権利に関する不適合
追完請求権、代金減額請求権、解除権の行使、損害賠償請求を行うことができます。種類・品質に関する不適合とは異なり、売主に不適合であることを通知する義務はありません。
特約による契約不適合責任の回避
欠陥・不備等が発覚したとしても、売主は買主に契約不適合責任を負わないとする特約は、当事者の合意により有効になります。しかし、売主が契約不適合の事実を知りながら買主にわざと告げなかった場合や、第三者に対し自ら設定・譲り渡した権利については、特約があったとしても責任を負うこととなることに注意が必要です(572条)。
瑕疵担保責任との違いは?
契約不適合責任と瑕疵担保責任との違いは、売主がその瑕疵(※法律用語上での欠陥等をいいます)を知っていた・注意すればその瑕疵を知りえたかどうかにあります。
契約不適合責任は、契約に適合しているかどうかを重視するため、売主が瑕疵を知っていたかどうかは問題とされません。それに対して、瑕疵担保責任はその瑕疵を売主が知っていた・注意すれば知りえた場合にのみ責任を負うものとされています。
契約不適合責任を問われないようにするためには?
契約不適合責任を問われないようにするためには、契約書にあらかじめ欠陥や他人の権利がかかっている旨等を記載することが重要になってきます。そのようにして当事者間で当該瑕疵について合意がなされていると判断できる場合には、契約不適合責任に問われることはありません。
終わりに
以上、契約不適合責任の種類とその対処について説明してきました。不動産売買には、売主も知らない間に契約不適合が発生していたなど、契約不適合責任が付きまといます。万が一契約不適合責任が発生してしまった際にどのように対処すればよいか、この記事を参考にしていただくことで円満に解決できる手助けができれば幸いです。