不動産売買の重要事項説明とは?

目次

住宅の購入はとても高額な取引で、一生のうち数少ないライフイベントです。また、不動産は生活の基盤であり、お客様の大切な資産となります。

そのため、売買契約が成立する前に重要事項説明というものを行います。

重要事項説明書の内容は専門用語が多くわかりにくいですが、不動産を取得しようとする方にとってとても大切なことが記載されています。

今回は、重要事項説明書がどのようなものか概要を確認しましょう!

重要事項説明の目的

冒頭で記載したように、不動産の購入や売却は一生の内で数少ない出来事です。また、その後のライフスタイルに関わる大きなイベントと言えます。

そのため、不動産売買を行う際には、取引後にトラブルが起きないよう重要な事項を確認して契約をする必要があります。

重要事項の説明方法

とはいえ、不動産売買の知識が十分にない消費者の方が、自分でで不動産の重要事項を調べて確認することは困難と言えます。

そこで、不動産取引の専門家である宅地建物取引士がお客様に説明しなければいけません

重要事項説明のタイミング

重要事項は不動産売買の成立やお客様の判断に影響を及ぼすものです。よって、重要事項説明は契約をするまでの間に行わなければいけません

重要事項説明の内容

重要事項説明の内容は大きく分けると①「物件に直接関係する事項」②「取引条件」③「その他」の3つです。以下詳しく見ていきましょう。

①物件に直接関係する事項

登記記録の記載事項、都市計画法・建築基準法等の制限、私道負担、インフラ関係(水・電気・ガス)、建築に関する書類の保存状況など、対象となる不動産に直接関係する事項の説明です。

登記記録に記録された事項

登記簿謄本の内容を説明する項目です。登記簿謄本とは、法務局で管理されている公的な書類であり、「どのような不動産か」「誰が所有している不動産か」「どのような権利を持つ人がいるのか」といったことが記載されています。

謄本上の名義人と所有者との同一性や、所有権移転仮登記や差押えの登記の有無、抵当権抹消の確認等に注意します。

都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要

住んでいる人達が自分の好き勝手に家を建ててしまったら、統一感のない支離滅裂な街になってしまい、安全性も影響します。

計画性のある住みやすい街を作るため、また、私たちが安全に暮らせるよう、都市計画法や建築基準法の制限があります。

私道に関する負担等に関する事項

国が所有している「公道」に対し、「私道」とは、個人が所有している土地を道路として使っているものです。

前面道路が私道の場合、建築時に私道の所有者から許可が必要なことや、管理費用の負担等の問題が発生します。

飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況

インフラ施設の利用できる状態や、配管の状況、整備の予定や整備に伴う負担金の有無の説明です。

宅地造成または建物建築の工事完了時における形状・構造等(対象不動産が未完成物件または新規物件のとき)

土地の造成や建築工事が未完成の場合、完了後にどのような物件になっているかの説明となります。

建物状況調査の結果の概要(既存の住宅のとき)

建物状況調査とは、建物の基礎、外壁、雨漏りの劣化や不具合の状態を専門家が目視・非破壊の方法で調査を行う制度です。

調査自体は義務ではなく、実施している場合は調査結果の概要を説明する項目です。

建物の建築および維持保全の状況に関する書類の保存の状況・地震に対する安全性に関する書類(既存の建物のとき)

建築関係の書類の保存状況を説明する項目です。例として以下のような書類が対象となります。

  • 新築・増改築時に法令適合性をチェックするための「建築確認申請書」
  • 建物の法令適合性が認められたときに交付される「検査済証」
  • 物状況調査を行った場合の「建物状況調査報告書」
  • 旧耐震の建物の場合の「耐震基準適合証明書」

建築確認・検査済証の交付年月日・番号等

建築確認通知書と検査済証の取得年月日や番号を記載する項目です。

当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か

造成宅地防災区域とは、都道府県知事によって指定される、地震による崖崩れや土砂の流出の恐れがあるエリアです。

このエリアに該当する場合、安全を保つために擁壁の設置やその他必要な措置を行うよう努めなければいけません。

当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か

土砂災害警戒区域とは、土砂災害の恐れがある区域です。

このエリアに指定されると、自治体は、土砂災害の情報収集や警報の伝達、警戒避難体制に関する事項を定める等の対応や、ハザードマップによる住民への周知などを行います。

当該宅地建物が津波災害警戒区域内か否か

津波災害警戒区域とは、津波が発生した場合に建物の損害や浸水等、人命への被害が起きる恐れがあるエリアです。

ハザードマップによる周知や避難施設の整備等の措置が講じられます。

水防法に基づく水害ハザードマップにおける当該宅地建物の所在地(位置)

ハザードマップとは、防災対策のために、被害想定区域や避難経路、避難場所などを記載した地図です。

ハザードマップの有無や、マップ上の対象物件の位置を説明する項目です。

石綿(アスベスト)使用調査の内容

石綿(アスベスト)とは建築材料であり、安価でかつ耐火性、断熱性、防音性などの機能を持っていたため、1960年代に多く使われていました。

しかし、発がん性があることがわかり、現在では製造や使用が禁止されています。

耐震診断の内容

旧耐震(昭和56年5月31日以前建築)に該当する物件は説明の対象となり、耐震診断の記録がある場合はその旨説明をします。

住宅性能評価を受けた新築住宅である場合

住宅性能評価とは、地震や風・積雪に対する「構造の安定」、柱や土台の「劣化の軽減」、給排水管・ガス管の「維持管理・更新への配慮」など、その他含めて10個の分野で性能を評価することです。

住宅性能評価を受けた新築住宅の場合は説明の対象となります。

一棟の建物またはその敷地に関する権利およびこれらの管理・使用に関する事項

こちらは対象物件が区分建物(分譲マンション)の場合に説明の対象となります。マンションには、価値観や生活の仕方など、様々な人たちが住む場所です。そこで、マンションの住む人たちのルールを定めた「管理規約」というものがあります

管理規約上で定める、共用部分の範囲、建物の用途、ペット飼育の可否、といったことをこの項目で確認します。

また、所有者が定期的に支払う修繕積立金や管理費も説明対象となります。

修繕積立金は、マンションの共用部分を修繕するために積み立てられるお金です。

例えば、大規模修繕をするとなったときに積立金が足りない場合、各部屋に一時金を請求したり、組合で借入を行って資金を準備するということになってしまう可能性もあります

そのため、積立金の毎月の費用や、すでに積み立てられている金額、滞納の有無やその金額などが重要事項として説明の対象になります。

管理費は、共用部を維持するための電気代や清掃費などに使用されます。こちらも毎月の金額や、滞納の有無とその金額等が説明されます。

その他、管理組合や実際に管理する管理会社の情報、建物の維持修繕状況なども、この項目で説明されます。

②取引条件

代金及びその他授受される金銭、契約の解除、損害賠償額や違約金、金銭の貸借のあっせんなど、取引条件に関する説明です。

売買代金および交換差金以外に売主・買主間で授受される金銭の額

売買代金とその内訳(土地価格・建物価格・消費税)や、その他売買代金以外にやり取りされる金銭をこの項目で説明します。

契約の解除等に関する事項

契約の解除事由についての説明です。

例として、手付解除や融資利用の特約による解除などがあります。

手付解除とは、解除期日までに、買主は支払った手付金の返却請求をしないことにより、また、売主は受領した手付金を買主に倍返しすることにより、それぞれ契約を解除できるとするものです。

融資利用の特約による解除は、買主が住宅ローンに通らなったとき期日までであれば解除できるというものです。

その他にもいくつか解除の種類があり、解除をするための条件等を説明しています。

損害賠償額の予定または違約金に関する事項

契約解除をする際にそれぞれが支払う違約金の金額や、支払方法に関する説明です。

手付金の保全措置の概要(宅地建物取引業者が自ら売主の場合)

売主が宅建業者の場合に該当します。宅建業者が売主として一定額以上の手付金を買主から受領する場合は保全措置が義務付けられています。

売主が保全を行う機関と保証委託契約等を締結して手付金返還を保証する方法などがあります。

支払金または預り金の保全措置の概要

不動産会社が売主・買主から支払金や預り金を受領する場合に保全措置を行うかどうかの説明です。

金銭の貸借のあっせん

買主が対象物件をローンで購入する場合、金融機関の名称や融資の金額、金利や借入期間、ローン承認の期日等を説明します。

また、不動産会社が提携している金融機関と提携約定している住宅ローン(不動産会社があっせんするローン)を利用する場合はあっせんの内容も説明します。

担保責任の履行に関する措置の概要

目的物の種類や品質、数や量が契約内容と異なる場合、売主の買主に対する担保責任が発生します。

例えば、対象物件に雨漏りがあるにもかかわらず、契約書に雨漏りがある旨の記載がなかった場合、修繕や代金減額、損害賠償や契約解除といった方法で責任を担保しなければいけない可能性があります。

そして、担保責任の履行に対して、保証保険契約等でなどの措置を講じるか講じないか、講ずる場合はその内容をこの項目で説明します。

割賦販売に係る事項

割賦販売とは、売買代金を分割払いで支払うことです。割賦販売に係る事項がある場合は説明をします。

土地の測量によって得られた面積による売買代金の清算

土地の面積を謄本の面積ではなく実際に測量した面積で定めて売買するケースもあります。

そして、もしも測量後に謄本の面積と異なった結果、異なる面積の差額分の代金を精算するか、精算する場合は対象の範囲や平米単価を説明するのがこの項目です。

④その他

その他告知すべき重要な事項の説明です。各項目で書ききれなかったことや、調査でわかった取引上重要なことを説明します。

以上です。

重要事項の内容は、お客様の意思決定に影響を与える内容です。説明を受ける中で少しでも不明な点や気になることがございましたら、不動産会社に確認し、十分なご理解の上契約に進みましょう。

次回からは、各項目について詳しく見ていきます!