目次
- 1 そもそも危険負担とは?
- 1-1 売主・買主どちらの原因にもよらない場合
- 1-2 売主の原因による場合
- 1-3 買主の原因による場合
- 2 履行遅滞・受領遅滞に建物が滅失した場合は?
- 3 終わりに
不動産取引においては、契約から引き渡しまでの間に天災等により不動産に欠損ができてしまったり、滅失してしまうことがあります。そのような場合、売主と買主のどちらがその責任を負うのか、不動産の引き渡しや代金の引渡しを行うことになるのか、解説していきたいと思います。
そもそも危険負担とは?
危険負担とは、売主が土地建物を何らかの事情(滅失した等)の理由で引き渡せなくなった際に、買主が売買代金の支払いを必要を拒絶することはできるか、という問題です。これには、契約から引き渡しまでの間に滅失等した場合のみならず、契約前にすでに滅失してしまっていた場合も含まれます。
売主・買主どちらの原因にもよらない場合
例えば、契約から引き渡しまでの間に天災により家が大きく損傷または滅失してしまい、土地建物が引き渡せなくなってしまった場合、これは売主・買主どちらの責任にもよらない損傷・滅失です。このような場合、買主は売買代金の支払いを拒むことができます(536条1項)。
ただし、土地建物の引き渡し後に売主・買主どちらの責任にもよらずに土地建物が滅失してしまった場合は、売買代金の支払いを拒むことができず、債務不履行責任(履行の追完請求、代金減額請求、契約の解除、損害賠償請求)もすることができません(567条1項)。
債務不履行責任の各請求権に関しては、以下の記事で詳細を記載してありますので、ご参照ください。↓
売主の原因による場合
例えば、売主が火の不始末等で火災が発生し建物を引き渡すことができなくなってしまった場合は、建物の滅失の責任は売主にあります。したがって、買主は、売主に対して債務不履行責任を追及することができます。
買主の原因による場合
例えば、買主の過失により建物に火災が発生した場合、建物の滅失の責任は買主にあります。したがって、買主は売買代金の支払いを拒むことができません(536条2項)。
履行遅滞・受領遅滞に建物が滅失した場合は?
売主・買主双方の責任によらない建物の滅失でも、履行遅滞(売主が買主に土地建物を引渡す期日を過ぎていること)、受領遅滞(買主が土地建物を期日を過ぎても受け取らないこと)の場合は、前述の扱いとは異なる扱いがされます。
履行遅滞の場合
売主が期日を過ぎても買主に土地建物を引渡さないでいるうちに当該建物が滅失してしまった場合、その責任は売主が負うこととなります(413条の2第1項)。したがって、買主は建物の明け渡しという履行が不能になったとして損害賠償請求をすることができます。
受領遅滞の場合
買主が期日を過ぎても売主から土地建物の引渡しを受けない(拒んでいる)あいだに当該建物が滅失してしまった場合、その責任は買主が負うこととなります(413条の2第2項)。したがって、売買代金の支払いの拒絶ができなくなります。
終わりに
以上のように、契約締結以降で建物が滅失してしまった場合は、売主や買主の責任によるものか否か、引渡し以後か否か、履行遅滞や受領遅滞があるか否かにより対応が変わってきます。この記事を参考にしていただき、どのような場合に当事者のどちらが危険負担を負うのか、ご理解いただけますと幸いです。